株の確定申告で国民健康保険料が上がる?知らないと損な損益通算の落とし穴と判断方法を解説

節約
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「損益通算で税金を取り戻せると聞いて確定申告したら、国民健康保険料が跳ね上がって逆に損をした」——投資家のあいだで実際に起きているこのトラブル、あなたは大丈夫でしょうか?

株の確定申告は「誰でも得をする」わけではありません。国民健康保険(国保)に加入している自営業者・フリーランス・専業投資家・退職者にとっては、税金の還付額よりも保険料の増加分が上回るケースが十分にあります。

この記事では、確定申告が国保に与える影響のメカニズム、会社員と国保加入者の違い、そして「申告すべきかどうか」を職業・状況別に判断するための基準を、具体的な数字を使って解説します。

📋 この記事でわかること

  • なぜ確定申告で国保料が上がるのか(仕組みの解説)
  • 会社員は影響なし・国保加入者は要注意の理由
  • 損益通算・配当申告・繰越控除それぞれの影響
  • 「申告で得か損か」を計算するシミュレーション例
  • 職業・状況別の判断フローチャート
  • 2029〜2030年に予定される制度変更の最新動向

⚠️ 本記事は2026年5月時点の情報をもとに執筆しています。国保料率は自治体ごとに異なるため、計算例はあくまで目安です。実際の判断は最寄りの市区町村窓口または税理士にご確認ください。

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まず確認:あなたは「会社員」か「国保加入者」か

確定申告が保険料に影響するかどうかは、加入している健康保険の種類によって完全に異なります。

✅ 会社員・公務員(協会けんぽ・組合健保加入)

社会保険料は給与額をもとに計算されます。株の利益をいくら申告しても、翌年の保険料には一切影響しません。損益通算・繰越控除を積極的に行ってOKです。

⚠️ 自営業・フリーランス・専業投資家・退職者(国保加入)

国保料は前年の総所得金額等をもとに計算されます。確定申告で株の利益を申告すると、その分が国保料の計算対象に加わり、保険料が増加します。申告前に必ず損得を計算してください。

なぜ確定申告で国保料が上がるのか?仕組みを解説

特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、株の売却益や配当金は証券会社が自動的に税金を差し引いてくれます。このとき、確定申告をしなければ、その所得は国保料の計算対象に含まれません

ところが、損益通算や繰越控除など何らかの理由で確定申告を行うと、それまで「国保の計算外」だった特定口座の所得が総所得金額等に算入され、国保料が上昇します

📊 国保料の計算のしくみ(所得割)

国保の所得割額=(総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 保険料率

「総所得金額等」に含まれる主な所得:給与所得、事業所得、年金所得、雑所得、確定申告した株式の譲渡所得・配当所得

※配偶者控除・医療費控除・生命保険料控除などの所得控除は国保の計算には適用されない点に注意

💡 保険料率は自治体によって異なる

所得割の保険料率は市区町村によって差があり、目安として医療分+支援金分で10〜15%前後の自治体が多いです(40〜64歳は介護分が加算)。自分の住む自治体の料率を市区町村のHPで確認した上で計算しましょう。

ケース別シミュレーション:申告すると得か損か

確定申告の目的は主に「損益通算」「繰越控除」「配当申告(総合課税・申告分離)」の3つです。それぞれのケースで国保への影響を確認します。

ケース① 損益通算で税金を取り戻したいケース

A証券口座で200万円の利益、B証券口座で100万円の損失が出た場合、確定申告で損益通算すると差し引き100万円の利益に対して税金がかかります。A口座の利益(200万円)に源泉徴収された約40万6,300円のうち、100万円分に相当する約20万3,150円が還付されます。

しかし問題はここからです。確定申告をすると、A口座の200万円もB口座の損失100万円も「総所得金額等」に計上されます(損益通算後の純利益100万円が対象)。

項目申告しない場合申告して損益通算する場合
源泉徴収された所得税(A口座)約40万6,300円(徴収済・還付なし)約20万3,150円を還付
国保の総所得金額等への算入0円(国保に影響なし)損益通算後の利益100万円が算入
国保料の増加額(目安:料率12%)0円(100万円−43万円)×12%=約6万8,400円増
差し引き手取り増減−40万6,300円(損失のまま)還付20万3,150円 − 国保増6万8,400円=実質+約13万4,750円の得
※税率・料率は概算。介護分は含まず。国保料は翌年6月から増加するため手元のタイミングに注意。

このケースは申告した方が得:損失が大きく税還付額が国保増加分を上回っています。ただし利益と損失の金額差が小さいほど「得」の幅は縮まるため、事前に計算が必須です。

ケース② 大きな利益があり、損益通算しても利益が残るケース

A証券で500万円の利益、B証券で100万円の損失のケースです。確定申告で損益通算すると、差し引き400万円の利益に対してのみ課税されるため、100万円分(約20万3,150円)が還付されます。

しかし、確定申告により400万円が国保の総所得金額等に算入されます。

項目申告しない場合申告して損益通算する場合
税金還付額0円約20万3,150円
国保料の増加額(目安:料率12%)0円(400万円−43万円)×12%=約42万8,400円増
差し引き±0円還付20万3,150円 − 国保増42万8,400円=実質約22万5,250円の損
※税率・料率は概算。介護分は含まず。

⚠️ このケースは申告しない方が得:利益が大きく残るほど、国保料の増加額が税還付額を大幅に上回ります。損益通算の「お得感」だけで申告すると逆効果になります。

ケース③ 繰越損失を使って今年の利益を相殺するケース

前年以前に申告した繰越損失が200万円あり、今年200万円の利益が出た場合、繰越控除を使えば税金はゼロになります(還付ではなく「払わずに済む」)。

しかし繰越控除の適用にも確定申告が必要です。その結果、今年の利益200万円が総所得金額等に一部算入される可能性があります(繰越控除後の残所得で計算されますが、控除前の利益の扱いは自治体により異なります)。

⏰ 繰越損失の期限に注意

繰越損失は最長3年間繰り越せますが、損失が発生した年から毎年確定申告を続けることが条件です。1年でも申告を忘れると繰越権利が消滅します。国保料の増加と繰越控除による節税の損得を毎年確認しながら継続するかを判断しましょう。

ケース④ 配当金を総合課税で申告するケース

所得税率が低い方(課税所得195万円以下)は配当を総合課税で申告すると配当控除が使えてお得な場合があります。ただしこの場合も配当所得が国保の総所得金額等に算入されるため、国保料が上昇します。

年収300万円の自営業者が配当50万円を総合課税で申告した場合、配当控除で所得税が数万円戻る一方で、国保料は(50万円×12%)= 約6万円増加します。配当控除の効果が国保増加分を下回るケースも多く、慎重なシミュレーションが必要です。

申告すべきかどうかの判断フローチャート

確定申告の要否を判断するための手順をまとめます。まず自分の健康保険の種類を確認し、次にシミュレーションで損得を計算してください。

1

健康保険の種類を確認する

協会けんぽ・組合健保(会社員)→ 株の申告は保険料に影響しないため、損益通算・繰越控除は積極的に実施してOK。
国民健康保険 → ステップ2へ進む。

2

確定申告した場合の「税金還付額(または節税額)」を計算する

損益通算:複数口座の利益と損失を相殺した後の還付税額を試算。
繰越控除:今年の利益を消した場合の節税税額を試算。
配当総合課税:配当控除による還付額を試算。

3

確定申告した場合の「国保料増加額」を計算する

申告後の総所得金額等(損益通算後の利益)を確認し、下記の式で概算を計算。
増加額の目安 =(申告する所得額 − 43万円)× 自治体の所得割率
所得割率はお住まいの市区町村のHPで確認できます。

4

ステップ2とステップ3を比較して判断する

税金還付額 > 国保増加額 → 申告して得
税金還付額 < 国保増加額 → 申告しない方が得
さらに70〜74歳の方は医療費の自己負担割合(2割→3割)への影響、介護保険料・後期高齢者医療保険料への影響も確認が必要です。

国保加入者が損しやすい「落とし穴」3つ

落とし穴① 所得控除は国保料計算に使えない

⚠️ 配偶者控除・扶養控除・医療費控除・生命保険料控除・社会保険料控除などの所得控除は、所得税や住民税では使えますが、国保料の計算には一切適用されません。国保の計算では基礎控除43万円だけが差し引かれます。そのため「所得控除で所得税はゼロでも国保料は高い」という状況が起こります。

落とし穴② 国保料の増加は「翌年6月から」発生する

国保料は前年の所得をもとに翌年6月に決定されます。2025年分の確定申告をすると、2026年6月から2027年3月まで保険料が上がります。税金還付は申告後数週間で振り込まれるため、「得をした」と思っていても半年後から1年以上にわたって保険料負担が続くことを忘れないでください。

落とし穴③ 70歳以上は医療費の自己負担割合が変わる

⏰ 70〜74歳の方は特に要注意

70〜74歳の方は通常医療費の自己負担が2割ですが、確定申告で株の利益を申告した結果、「現役並み所得者(3割負担)」と判定されるケースがあります。年間の医療費が多い方は、保険料増加だけでなく窓口負担増加も加味した試算が不可欠です。

【最新動向】2029〜2030年に向けた制度変更の注意点

現在は「確定申告をしなければ国保に影響しない」という仕組みですが、政府は金融所得を社会保険料の算定に反映させる制度改正を検討・準備しています。

2025年6月に閣議決定された「骨太の方針2025」では、「医療・介護保険における負担への金融所得の反映に向けた具体的な制度設計を進める」と明記されました。まず後期高齢者医療保険料への反映が2029〜2030年をめどに進められる見込みで、国民健康保険料への反映はその後の段階的な導入が想定されています。

💡 NISA口座の利益は引き続き対象外の見込み

制度設計の議論では、NISA口座内の非課税利益は算定対象から除外する方向性が示されています。NISAを優先的に活用することは、税制上の優遇だけでなく将来的な社会保険料の増加リスク回避という観点からも有利になる可能性があります。

まとめ:国保加入者は確定申告の前に必ずシミュレーションを

📌 この記事のまとめ

  • 会社員(協会けんぽ)は保険料に影響なし。損益通算・繰越控除は積極的に活用してOK
  • 国保加入者(自営業・フリーランス・専業投資家・退職者)は要注意。確定申告が国保料算定の起点になる
  • 損益通算で利益が残る場合は、国保増加額が税還付額を大幅に上回ることがある
  • 国保料計算では基礎控除43万円のみ適用。その他の所得控除は一切使えない
  • 国保料の増加は翌年6月から1年間続く。還付タイミングとのズレに注意
  • 70〜74歳は医療費自己負担割合(2割→3割)の変化も試算に含めること
  • 2029〜2030年に金融所得が社会保険料に反映される制度改正が予定されている

「税金が戻ってくる」という情報だけに飛びつかず、国保料の増加を含めたトータルの損得を必ず計算してから申告の判断を行いましょう。判断に迷う場合は、税理士や市区町村の確定申告無料相談窓口(毎年2〜3月に開設)の活用をおすすめします。

※本記事は2026年5月時点の情報をもとに執筆しています。国保料率は自治体ごとに異なります。税制・社会保険制度は改正されることがあるため、最新情報を国税庁・各市区町村のホームページや専門家にご確認ください。

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