宇宙事業で注目を集めるスカパーJSAT HDの個人投資家説明会資料等をもとに見ていきましょう。
説明会ではどのような事業をやっているかなどの基本的な内容を中心に説明されていました。
概要
沿革
この会社は2007年に「スカパー!」などの有料放送でお馴染みのメディア事業を営むスカイパーフェクトと、衛星通信事業など、宇宙事業を営むJSATが統合してできた会社です。
沿革を見てもわかる通り、実は宇宙事業の方が長い歴史があります。1985年に電気通信が自由化され、JSATのもととなった衛星通信の3社が生まれました。
セグメント
スカパーJSATは「宇宙事業」と「メディア事業」の2つで構成されています。
売上にあたる営業収益はほぼ半々ですが、営業利益、純利益を見てみると宇宙事業が8割を占めています。
以前は宇宙事業とメディア事業で売り上げの比率は1:2程度でしたが、スカパーの緩やかな衰退に対して宇宙事業は保有する衛星を増やし、存在感を大きくしてきました。
宇宙事業
宇宙事業は統合前のJSATのブランドで展開しているため、宇宙事業の説明ではスカパーJSATをJSATに略させていただきます。
衛星は飛行する高さによって上の図のように大きく3種類に分けられます。JSATが現在保有している衛星は一番高い部分をまわる静止衛星です。
主にアジアや北米を中心に16機の衛星を運用しています。
ちなみに米国のスペースXが提供するスターリンクは低軌道衛星を使用しています。
この衛星は軌道が低くいため、通信速度は速い一方で範囲がせまく、時間がたつと地上と位置がずれてしまい通信圏外になりやすいデメリットがあります。
そこでスペースXは3000機以上の大量の衛星を打ち上げることで幅広い地域を常に通信できるようにしています。
宇宙事業の売上構成比
宇宙事業の約半分、51%を占めているのが国内衛星通信です。官公庁や公共インフラ事業など幅広い顧客に提供してます。また25%はスカパーへの提供になります。
メディア事業
昔はケーブルテレビとして順調に拡大していたスカパーですが、近年はU-NEXTやNETFLIX、プライムビデオなどのビデオオンデマンドサービスに押されてここ数年は契約者は減少傾向です。
補いきれていないものの、FTTH事業等や自社スタジオの貸し出しなどの新事業も段々と育成が進んでいます。
以前はJリーグの放映権がありましたが、放映権の獲得競争でDAZONに負けてからは契約者数の減少は止まっていません。現状では全球団のプロ野球試合を確保していることが下支えとなっていますが、今後の野球人気や他社との放映権獲得競争が激化した場合はもう一段利益が下がる可能性があります。
放送周辺領域の取り込み
既存事業のスカパーは厳しい状況が続きそうですが、事業全体としては配信やそれを取り巻くグッズの販売、ツアーの企画などコンテンツなどの周辺事業の収益化によって放送のプラットフォームを志向しています。
業績
ここ10年ほどの業績は、利益はだいたい横ばいな一方で売上は減少傾向です。
一番大きな原因はメディア事業のスカパーで、NETFLIXやTVerなどの様々なオンデマンドサービスが台頭し、競争環境が厳しくなってきています。
さらに2017年まではJリーグの放映権を持っていたためサッカーファンが契約していましたが、DAZONに放映権が移ったため2018年に大きく減少し、以降はその傾向が続いている状況です。
一方で、足元では成長事業の宇宙事業が売り上げ、利益ともに上回り、段々と成長への転換が期待できます。
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